2021年1月20日、久しぶりにパールネックレスをつけました。アメリカの大勢の女性たちが、「今日はパールのネックレスをつけよう!」と呼びかけ合っていて、わたしもその仲間でいたかったのです。

わたしのその日のネックレスはシルバーのバロック真珠でしたが、純白のパールネックレスは、その日の就任式でアメリカ副大統領に就任したカラマ・ハリスのトレードマークになっているのです。その彼女に敬意を表し、称えようと、そんな呼びかけが広がったのです。

カマラ・ハリスは、女性としてだけでなく、マイノリティ(ジャマイカ出身のアフリカ系の父、インド出身の母)として、初の副大統領です。白人男性優位の社会で、これは驚くべきことなのです。たいへんな快挙、革命なのです。そして同時に、大勢が「これは自然な流れ」と受け止めたことでもありました。このような快挙がまもなく起こる、ということの前兆が、いくつも連なっていたからです。ベスト・タイミングでその時が来ると、大勢が受け入れていたところに、そのタイミングが来たということです。実は、どのような驚くべき快挙も、そのようにいつの間にか熟してきたものがあって、突然に起こるものなどないのですが。

就任が決まった時、彼女は、その前兆はずっと以前から紡がれていたという意味のことをスピーチしました。「この国を切り開き、歴史を動かしてきたのは、あらゆる人種の女性たちです」「わたしの母も祖母も含めて、全ての女性たちが、今の私を作り、この日を作りました」と。そして、「私は副大統領となる最初の女性かもしれないけれど、もちろん最後ではないのです。私を見ているすべての少女たち、あなたたちが、今、自分の将来の可能性を確信しているのだから」と。

 

“道は開ける。大丈夫。不安ならわたしをご覧なさい。わたしは未来のあなた。いいえ、未来のあなたはわたしを超えられる。わたしが作った道を歩き、わたしを踏みしめてさらに前進できる。”

これが、良きアメリカに根ざす開拓精神です。

今のアメリカでも、少なくとも女性の間で伝えられ分かち合われているものです。

そしてそれこそ、アメリカ人だけでなく、また願わくば女性だけでなく、皆が、いつも心に抱いていたい精神、成長と、そして成功の基礎となる精神なのだと思います。成功するとは、伝えられる、人と繋がることだからです。自分自身を惜しみなく与えられるということだからです。

 

就任式前に議事堂襲撃事件が起こり、厳戒態勢をひくなど、前代未聞の状況下で行われた式典で、ハリスの柔らかな笑顔は、大勢の心の拠り所、希望の星として映ったと思います。胸元には白い真珠のネックレス、ドレスとコートは、民主党シンボルカラーの青と共和党の赤を混ぜ合わせた“協調”の色、紫。

そしてやはり、ハリスとハリスを支持する女性たちに共鳴するように、多々のエレガントなファッションが式を盛り上げました。わたしがニューヨークに来てから、今年が9回目の大統領就任式になりますが、これほど、式場での女性と女性のファッションに目を奪われたのは初めてです。

ファーストレディ、ジル・バイデンや、前大統領夫人ミシェル・オバマ、さらにはハリスの継娘エラ・エムホフなど、次々と、人目を引くファッションとたたずまい、魅力的な笑顔の女性たちが登場。レディ・ガガが“驚嘆の”装いで国歌斉唱したかと思うと、これまた鮮やかで個性的な姿で登場したアマンダ・ゴーマンが、ハリスのスピーチを明るく照らす陽の光のような詩を朗読して。

・・・光は常にある。それを見つめるだけの勇気があれば。光になるという勇気さえあれば・・・(by Amanda Gorman)

さらには、晩のコンサートでは、ケイティ・ペリーが華やかにトリをつとめ、アマンダの詩を受け継ぐかのように、歌い上げました。

自分を、紙みたいにペラペラでつまらない人間と思ってしまったことはある?

でもね、あなたは輝ける。火をつけるだけでいい。なぜってあなたは、花火なんだから。(Katy Perry “firework”)

アメリカはさまざまな問題を抱えています。それらの問題が沸騰する中での新政権発足でしたが、例えばこうして女性たちの心に心を合わせてみると、輝くひと粒ひと粒の真珠が一本の紐に通されてネックレスになるように、自分もまた、その長い連なりの中のひと粒だと安心して受け取れるように思うのです。自分が花火だということに気づく。火を灯しさえすればいい。そしてその火は、自分でつけるというよりも、時がきたら火が自らやってきて、点火してくれる。だからそれを信頼していれば良いのだと。

こうなりたいと願う自分になろうとして足掻く必要はありません。そのような努力は無駄だからです。なりたい自分になろうとするのではなく、自分とは、いつでも点火の用意のある完璧な光なのだと受け入れていたいです。それが、タイミングを逃さないコツです。そして毎日、「光であるはずがない」「やっぱり紙みたいにペラペラ」という古いパターンの自己否定が出てきたら、先導してくれる女性たちの優しい笑顔を、真珠のネックレスを、アマンダの詩を、思い出しましょう。“花火”を歌いましょう。一人で深刻にならない、と心の中の彼女たちと誓うのです。

   

( 初出誌 Linque Vol.71 発行 : 国際美容連盟)