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72. “What do you stand for?”

執筆者の写真: Yasuko KasakiYasuko Kasaki

「この状況をどのように考えたらいいのか?」と頭を捻ることはよくありますよね。

それが社会に起きていることであれば、あれこれのメディアが伝えるさまざまな見方、意見を見聞きして、状況をより多角的に把握し、その上で自分の立場や意見を決めようとするでしょう。

その場合、かつては、リソースは新聞雑誌にテレビ、というごく単純なものでしたから、各自が行き着く結論も、大概人と似たり寄ったりのもので、それ以上に深く考えるためには、その状況と関係のある、またはまったく関係のない書籍をじっくり読んで根本的な考え方を吸収していくほかありませんでした。

私の大学時代に、世界初、インターネットというものが登場し、人気のあった助教授が、ネットがどのように世界を変え、個々の人生を変えるか、滔滔と語り聞かせてくれたことがありました。大勢の学生が感嘆とともに拝聴したのですが、終わってから、ふと思い立って尋ねてみました。「先生、お話くださった内容のリソースはどこですか?」。正直な先生の答えはこうでした。「『週刊プレイボーイ』」。当時はそのくらい単純だったのですね。

今は、SNSが行き渡り、目にする考え方の多様性に限りがなくなっていて、しかも発信者を選り分けることもなかなか難しく、書物を紐解こうとするより前に、雑多な情報量に食傷してしまうほどです。

ごく個人的な事柄を、どう考え、どう行動したらいいか? を考える場合も、私たちは指針を求めたくなります。アドバイスが欲しくなります。誰の言うことだったら信じて受け入れられるだろうか、と考えるところから始まるかもしれません。似たような事例をネットで見つけようとするかもしれません。病気になった時など、同じ症例の人のブログなどに励まされたり真偽の定かでない情報にかき乱されたり、右往左往するかもしれません。

パンデミックが始まって以来、「どう見たらいいのか?」「どう行動すべきか?」「どのように自分たちを守れるのか?」「将来の計画はこのままでいいのか? 軌道修正が要るならどのように?」という問いかけは、ほとんどの私たちの心に浮かんでは消える、その連続ではないでしょうか? そしてその度にあれこれの声に耳を傾けては疲れ、気晴らしをしては過ぎゆく時間の速さに慌て・・という繰り返し。「そんなこんなでつくづく自分の無力さに嫌気がさして・・」とおっしゃる方に大勢会ってきました。

そんな問いが生まれる時、つまり答えを出す方程式が自分の中に見つけられない時、欲しいのは、その特定の問いだけでなく、あらゆる問いかけに自信を持って答えられる明晰さを持ちたいということではないでしょうか。

その明晰さをどう得るか? ということに思いを巡らせるとき、浮かぶのが、What do you stand for? という英語の言い回しです。さまざまな状況で使われ、それぞれに意味は微妙に違うStand for は、〜に依って立つ、というような基本的意味を持っていて、直訳すれば、「あなたは何を基準にものを見る人ですか?」という問いかけになります。少し意訳するなら、「あなたが守りたい信念は?」「あなたとは、何を表現している存在なのですか?」という感じでしょうか。

自分が依って立つものがはっきりしていれば、その視点からあらゆるものを見わたすことができ、自ずと立ち位置がはっきりします。たとえば「公平さ」を基準にするなら、どんな状況でも、そこに差別や人を見下したりへつらったりする態度がないかを見通して、そうではない自分であるということはどんな見方、行動をすることなのか、ということがわかります。「平和だけを受け入れる」「愛だけを見る」など、基準となるキーワードはいろいろです。

パンデミック下で、私は「真実」という答えを持つ人たちと素晴らしい出会いをいただきました。

コロンビアの首都ボゴタの人たちで、『奇跡のコース』の学習者です。彼らは、パンデミックで分離、分断され、流言飛語に迷う人たちとどうやって繋がり、恐れからでっちあげられた偽りではない本当のことを確認し合い、正気の心で過ごしていけるか、それぞれが自己のスピリットを実感しながら「真実」を生きられるか、と考えて、オンラインのコミュニティを作ったのです。

中心となる運営者は4人、毎日二時間のクラスを二回行い、加えてスペシャルクラスも。クラスで教えるのはスタッフも含めて大勢の教師たち。スペイン語中心で、英語の話し手の場合は通訳付き。

教師の一人として声をかけてもらった時、私は、クラスメニューがそんなにあるのだから、通常の参加者はせいぜい10名くらいではないか、と思ったのです。ところが、参加者は180名もいて、仰天してしまいました。しかも全員がスピリットの光を発し、優しい愛のエネルギーをzoom空間に送り合っているのが五感を震わせるほど伝わってくるのです。

後でスタッフ曰く、コミュニティの発足はパンデミック始まってすぐ。一年の間にコミュニティは世界中に広がり、瞬く間に5000人のメンバーになったと。「2年目の今年も大規模のフェスティバルを開催するのでぜひ参加してくださいね」。

これほどの引力、波及力は、どこから来るものでしょうか。やはり”stand for〜”の力ではないでしょうか。自らの依って立つところが明確な時、大勢の人の心に潜む同じものが喚起され、共感を呼ぶのですね。

Stand for〜は、状況を選びません。全ては状況によるのではなく、自らの心の基準のよるものになるからです。そしてそこには、失敗や喪失はないのです。

(ちなみにそのコミュニティはこちらです。https://ucdmuniversal.org)

( 初出誌 Linque Vol.73 発行 : 国際美容連盟2021年8月)

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