53. 目的を知って、奇跡を経験する

ニューヨークに移り住んで30年近くになります。そして、世界各国の方々のスピリチュアル・カウンセリングを始めてから20年たちました。 「奇跡のコース」を同じ年月、教えています。
2004年に、マンハッタンにCRS(=Center for Remembering and Sharing. センター・フォア・リメンバリング・アンド・シェアリング)というヒーリングセンターを設立し、そこで教えていますが、始めた頃は、友人のセラピストのドクターズ・オフィスや、キャンドルショップの奥の部屋をお借りしていました。
場所がニューヨークですから、それはもう、さまざまな方にお目にかかりました。国籍もマチマチ(ウルグアイ、インドネシア、ギニア、トリニアードドバゴ、ブルネイ、ペルー、ウズベキスタン、「えーっと、それはどのへんにある国なの?」と最初に尋ねなければならないこともしばしば)、第一言語もマチマチ(お互いに訛りが強くて言葉の意味がすぐに飲み込めなかったり、片言の英語しか話さない人もいましたが、大事なコミュニケーションというものは、言葉の壁を超えて、完璧にできるものだということを学びました)年齢もマチマチ(今までのわたしの経験幅は、5歳から93歳です)、もちろん、人種、外見、考え方、人生経験、あらゆる角度でありとあらゆる方々とお会いしました。
それぞれが直面していること、というものが必ずあるのですが、いちばん多い訪問目的は、「自分の人生の目的を理解したい」というものです。

人生のほんとうの目的、究極の目的を知りたい。

そのような思いを持っている人が、数えきれないほど大勢、世界中にいるということを知って、わたしは胸が震えるほど感激しました。それで、わたしがカウンセリングをさせていただくのではなく、わたしのほうが、まっすぐにほとばしる心を教えていただいて、「会ってくださってありがとうございます」とお礼を申し上げることのほうが多いのです。わたし自身は、自分の人生の目的について真剣に考えたことは、実は、ありませんでした。この宇宙のほんとうのことが知りたい、と願ってはいましたが。
そのなかに、成功したファッション・デザイナーがいました。 自分のブランドこそ持っていませんでしたが、チーフ・デザイナーとして、一流の、ファッションの世界に疎い人でも知っている有名なブランドをヨーロッパとアメリカで、いくつか務め上げていました。いくつか、というのは、頭角をあらわす人には必ず引き抜きがくるからです。
公園の南側の瀟洒なコンドミニアムと、クラシックカーを所有し、写真を撮ってもプロ、陶芸、乗馬を趣味とするゲイのハンサムな独身貴族です。首には、チェーンに小さな十字架。日曜日の朝には必ずユニティ教会に通い、祈りを捧げる人でした。なにもかも完璧、調和がとれ、申し分のない成功者であるからこそ、 50歳という年齢が近づいて、今後の人生について真剣に考える時期がきたと感じたのだと言っていました。
15年前に会ってからは、定期的に会って一緒に瞑想し、祈り、目的を明確にし、スピリチュアル・リーディングを行い、そして「奇跡のコース」を共に学んできました。
最近訪ねてくれた人のなかに、24歳にしてIT事業で財をなし、早々にリタイアし、「残りの人生をどうやって役立てたらいいか考えたい。助けてほしい」と言った黒人青年がいましたが、わたしの経験では、キャリアで成功するニューヨーカーは、遅くとも50歳になるまでに「リタイア後」の「社会貢献と真の自己実現」を考えるようです。
わたしとご縁があった人は、たいてい 「生きていること自体が奇跡。それを感じたい」「誰もが、奇跡のなかで生きている。それをなんとしてでも目撃していきたい」 という心の奥の願いに触れることになります。わたしは、この、心の奥に潜んでいる切なる願いに意識が触れることによる威力に、ただただ、驚きながら20年過ごしてきたと言っても過言ではありません。もちろん、年々慣れてくるし、それが当たり前のこと、自然なことと受け取れるようにはなっていますけれども、それでも、その成果、結果、影響力には、その都度びっくりさせられてしまうのです。
各国の、大勢の方々の「この人生での目的」に長い年月、ほぼ毎日、取り組んできて、 目的がわかれば、ほかのあらゆることもわかる、ということを学びました。
人生の、いわば、大目的がはっきりしているなら、数々の中小の事柄の目的も、それに沿っているわけですから、明快になります。
何をするにしても、目的がわかっていれば、物事は、筋道を失うことなく、遠回りをすることなく、速やかに進み、達成されるということをみなさんと一緒に経験してきました。北極星が見えていれば、嵐に遭い、航路を見失っても、迷わず舵をとることができるのです。
しかも、目的がわかっていることと、結果があらかじめわかっていることは同じだという事実も判明しました。さらには、その結果は、「こうであったらいいな」とか「こうでなくてはならない」と心に思い描くことより、はるかに大きな成果となって現れるという法則も経験を通して知ることとなりました。なぜなら、真の成果、つまり、心から喜べる結果とは、自分ひとりの努力でつかみとり自分ひとりでほくそ笑むものではなく、この宇宙に満ちている、わたしたちひとりひとりの想像力を超えた叡智の力が、他の人々との出会いを通じてもたらされるもの、そしてその人々とともに分かちあうものだからです。
デザイナーの彼は、今、ファッション業界をはるかに超えたインターナショナルな土俵で、さまざまなプランニングと教育事業に活躍しています。20代の富豪は、コツコツと、日本語と中国語を取得しながら、瞑想を通して、インスピレーションを受取る練習に励んでいます。どちらも、想像を超えた出会いによって、するすると運ばれて人生が広がっているのです。
目的と知るとは、出会いの意味を覚えていること。それが、人生を奇跡へ導く鍵だということ。驚くに当たらない、自然な摂理に違いありません。

( 初出誌 Linque Vol. 54 発行 : 国際美容連盟 2016年10月 )